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研究内容
   金属を主とした材料プロセス内には、流体の流動、熱移動、物質移動からなる移動現象が見られます。 本研究室ではそれらの移動現象の実験・解析し、超音波・マイクロ波・衝撃力・不定流動・電磁力等の"物理的作用"を利用することで環境調和プロセスの設計・開発を行っています。
   具体的なものとして、排ガス無害化処理、溶融金属の精錬・鋳造および表面改質過程の高効率化・省エネ化、含金属廃棄物の再資源化・適正処理技術などを研究テーマとして扱っています。

超音波エネルギーを利用した材料プロセス:ソノプロセッシング

   溶融金属中といった過酷な環境下で動作させる大型超音波ホーンには、そのような実環境下でも高性能・長寿命での適用が求められます。 本研究では、日本軽金属株式会社や日本国内の超音波装置メーカーと連携し、国内外においてこれまでに報告例が無いセラミックスホーンを開発している。 コンセプト提案から詳細設計、材料選定、制作、性能検証、実用化まで一貫して研究開発を進めています。
   現在、溶融金属に限らず強酸・強アルカリ溶媒の高反応性液体に対するセラミックスホーンの適用可能性についての調査を継続しています。 また、超音波処理の効率を向上させるために、キャビテーション発生面積の広い新規ホーンの設計・開発を行っています。
   以下に溶融アルミニウム合金処理用ダンベル型ホーンの特性をご紹介します。
ANSYSシミュレーション
超音波ホーン稼働時のホーン内伸縮変位分布を示している

設計を元に実際に作成したホーン

超音波ホーンの主要特性・性能
材質 窒化ケイ素セラミックス
(日軽セラコンポS:NLM製品)
先端直径 40~60 mm
全長 460~470 mm
先端の最大振動振幅 60 μm(p-p)
動作周波数 19.5~20.5 kHz
音響出力 0.3~1.2 kW
浸漬深さ 0.01~0.16 m
使用最大温度 800 ℃
溶融Al中寿命 700 時間
   同条件で測定した金属製ホーンの寿命は鋼で0.3時間、Ti合金で2時間、Nb-Mo合金で17時間となっており、寿命の大幅な改善が可能となりました。    金属間化合物は金属と金属の化合物であり、多くの場合硬くて脆いのが特徴です。 アルミニウム合金の製造における金属間化合物は、鋳造凝固時に生成する金属間晶出物と熱処理時に生成する金属間析出物がありますが、特に鋳造時に粗大な金属間化合物が生成すると合金の機械的特性・加工性に問題が生じます。
   本研究では、アルミニウム合金の鋳造における均一かつ微細な金属間晶出物を得るために、溶融アルミニウム合金に超音波振動を与えます。 それにより特に粗大化しやすいCr、Fe、Zr、Ti、Mn等の遷移元素を含有する金属間晶出の形態制御を目的としています。 金属間化合物の大きさ、形状、超音波処理の時間と温度の影響について調べ、超音波振動による金属間化合物の微細化メカニズムを解明を行っています。    超音波洗浄、超音波鋳造などの超音波応用技術は音響キャビテーションという現象を利用しています。 しかしながら、キャビテーションが発生すると超音波エネルギー消散によって音響流という現象も起こり、上記プロセスの効率に肯定的、否定的、両方の影響を及ぼします。 例えば、超音波鋳造では音響流が溶湯の攪拌、熱伝達、結晶核の移動、偏析抑制等のメカニズムに影響するため、キャビテーションと音響流を同時に制御する手法の確立は非常に重要な課題です。
   本研究では、水モデル実験を行って、まずキャビテーション強度と音響流速度に対するホーン先端形状と振動振幅の影響について調査します。 それから実験結果に基づき、音響流の数値計算を行い、キャビテーションと音響流の同時抑制が可能な超音波照射法を検討しています。    従来、電気炉ダストやステンレスダストから亜鉛を回収するために開発されてきた乾式ダストリサイクルプロセス(例えば回転炉床法RHF)ではまだ様々な問題が残っています。 中でも、酸化亜鉛の還元によって生成された二次ダスト粒子の再酸化、粒子のダクト内壁への固着、粒子捕集用バグフィルターの早期目詰まり、捕集効率劣化と寿命低下がよく言及されています。
   本研究では、乾式ダストリサイクルプロセスの効率を向上させるために、高温ガス中に浮遊した亜鉛粒子へ強力超音波を印加して、亜鉛粒子の挙動、特に凝集体形成、表面酸化に対する超音波の強度と周波数、高温ガスの成分、温度と流量の効果を明らかにすることを目的としています。