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研究内容
   金属を主とした材料プロセス内には、流体の流動、熱移動、物質移動からなる移動現象が見られます。 本研究室ではそれらの移動現象の実験・解析し、超音波・マイクロ波・衝撃力・不定流動・電磁力等の"物理的作用"を利用することで環境調和プロセスの設計・開発を行っています。
   具体的なものとして、排ガス無害化処理、溶融金属の精錬・鋳造および表面改質過程の高効率化・省エネ化、含金属廃棄物の再資源化・適正処理技術などを研究テーマとして扱っています。

衝撃力を利用したプロセッシング

   アルミニウム再生地金は、ボーキサイトから作られる「新地金」に比べ、再生に必要なエネルギーはわずか3%と省エネルギーに大きく貢献できます。 しかしながら現在、展伸用合金として再利用される展伸材スクラップの比率はかなり低く、25%を超えません。 その原因のひとつは、アルミニウム合金中に不純物として混入するFe、Si、Zn、Cuなどの元素が粗大な金属間化合物の生成を引き起こすためです。
   本研究ではアルミニウムスクラップの完全リサイクルを目指して、アルミニウム合金に晶出する金属間化合物の悪影響を低減させる新規無害化剤とその合成プロセスの構築を目的としています。 本研究が目指す無害化剤は金属間化合物の不均質凝固核、すなわち接種剤として作用し、単に金属間化合物の微細化を促進する、もしくは針状金属間化合物から等軸結晶粒への遷移を促進する効果を有する化合物です。 このような無害化剤を含有した母合金を作るためには、下の図に示すように、3つのステップで行われるプロセスを検討しています。

Alスクラップの無害化処理
   本研究は超音波振動を利用し、金属表面にミクロ・ナノ構造の金属化合物あるいはセラミックスのコーティング膜または複合層を形成させるメカノケミカルコーティング技術の原理を確立することを目的としています。
   本研究が目指す新技術のイメージを下図に示します。 硬質ボール(0.1~5mm)および金属やセラミックスのナノ・ミクロ粉末を超音波共振チャンバーに装入し、チャンバーに高周波の音波を照射、振動させます。 これにより硬質ボールは激しく運動し、上部に置かれた金属基板の表面に激しく衝突を繰り返します。 基板表面に付着した粉体粒子の一部は繰り返し粉砕や変形を受けることにより、粉体粒子と基板間では冷間圧接・拡散による接着や固相変態、金属間化合物の生成等が引き起こされます。 また、雰囲気ガスを制御することにより、酸化物や窒化物等の化合物形成を制御できる可能性もあります。 その結果、基板表面上にミクロ・ナノ構造を持つ種々のコーティング・複合層を形成できることを確認しました。
   本プロセスの主な特色は、常温・気圧で金属表面上にミクロ・ナノ構造をもつ安定した金属または酸化物・窒化物・炭化物等セラミックスのコーティング膜を合成できることにあります。 なお、このようなドライメカニカルコーティング法は、固体状態を維持した状態で合成を行うことができるので、金属基板とコーティング材の組み合わせに対する制限が少ない利点を有します。

ドライメカニカルコーティング法