研究内容

Material Flow Analysis

アルミニウム合金のマテリアルフロー解析

修士課程 中村 哲也

1.背景

Fig1に,アルミニウム合金の種類とその用途先を示す[1].Fig1に示すように,アルミニウムはその多くが種々の元素を添加したうえで合金として用いられている.

しかしながら,アルミニウムのリサイクルでは,スクラップに含まれる合金元素や不純物の存在が技術的な制約としてしばしば挙げられる.MgやZnいった一部の合金元素を除き,一度アルミニウムに混入した元素のほとんどは,熱力学的に除去困難である[1].アルミニウム合金は,合金元素濃度が5%以下の圧延品と,15%程度の鋳造品の2種類に大別される.鋳造品はスクラップ中の許容濃度が高いために,アルミニウムスクラップのリサイクル材は,主に鋳物・ダイカスト用に使用されている[2].そのため,今後このような状況が続くと,発生するスクラップが鋳物・ダイカストで吸収しきれなくなり,スクラップの余剰が生じると指摘されている[3].

こういった背景から,近年圧延スクラップを圧延品生産に使用するproduct to productリサイクルシステムの促進が要求されている.しかし,このような高度なリサイクルシステム構築に資するアルミニウムの素材循環の分析を行うためには,現状の素材の量だけでなく,その品位を評価する必要がある.特定の物質が,①「どこに」(場所)②「どのくらい」(量)③「どのような形態で」存在しているのかを把握することは上記の資源・廃棄物管理の観点から極めて重要である.

2.目的

本研究では,アルミニウム合金の資源・廃棄物管理および循環システムの確立のために,WIO-MFA(Waste Input-Output Material Flow Analysis)モデル[3]をアルミニウムのマテリアルフロー分析に適用することにより,上記3つの情報の定量的な把握を目的とする.現在,産業連関表の部門分類では,アルミニウム製品の部門が圧延品,鋳造品に細分化されていないため,合金種ごとの分析をすることができない.そこで,アルミニウムのマテリアルフロー分析実施のために,アルミニウムに関する部門を「圧延品」(1000系合金8種類,2000系合金6種類,3000系合金5種類,4000系合金2種類,5000系合金12種類,6000系合金5種類,7000系合金5種類,その他圧延合金1種類),「鋳造品」に細分化・物量表記化すると共に,アルミニウムのMFAに対応したWIO-MFAモデルの拡張を行っている.

アルミニウムドロスを原料としたアンモニア製造

Fig1.Demand for aluminum materials in Japan (2003 fiscal year) [1]

Fig3.Final demand of main materials of aluminum “wrought alloys” in Japan.

参考文献

[1] K.Nakajima, O.Takeda, T.Miki, K.Matsubae, S.Nakamura, T.Nagasaka: Thermodynamic Analysis for Contamination by Alloying Elements in Aluminum Recycling: Environ. Sci. Technol. 2010, 44, 5594–5600.
[2] H.Hatayama, I.Daigo, Y.Matsuno, Y.Adachi: Evolution of aluminum recycling initiated by the introduction of next-generation vehicles and scrap sorting technology: Resources, Conservation and Recycling 66 (2012) 8–14
[3] Shinichiro Nakamura and Kenichi Nakajima; Material Transactions, Vol.46, No.12, pp.2550-2553, (2005)

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