研究内容

Material Flow Analysis

農作物消費に伴うリン資源の国際フロー解析

修士2年 森村武史

リンは、植物の生長に欠かすことのできない元素であり、主に農業分野で肥料として用いられている。また、農業分野での利用量に比べると少量であるが、工業分野でも幅広く利用されている元素である。将来的にリン資源は、世界的な人口増加による食料の増産とバイオ燃料の需要の増加により、その需要が増加していくことは確実であるといわれている。

リン資源の現状に着目してみると、リン鉱石の耐用年数(埋蔵量/採掘量)は50~150年程度であるといわれている。その主な産出国は、中国、アメリカ、モロッコ、ロシアなどであり、その四か国で世界のリン鉱石産出量の七割以上を占めていることから、リン資源の一部地域への偏在性がわかる。近年ではリンの戦略資源化による価格の高騰や産出国による囲い込みが見受けられ、リン資源の持続的で安定な供給への関心が世界的に高まってきている。

このような背景から、本研究では以下の二つのことを目的としている。一つ目は、主に食料分野に着目した商品の消費に伴い消費されるリン量(直接消費量)、商品の生産のために投入され、生産国で歩留り落ちしているリン量(間接消費量)をそれぞれ推計し、それをもとに各商品のバーチャルリン(直接消費量+間接消費量)を算出する。バーチャルリンは各商品のリン資源への依存度を示す指標となる。

二つ目は、バーチャルリンの算出結果とGLIO(Global Link Input-Output)モデルを結合させた分析を行う。GLIOモデルとは日本の産業連関表と貿易統計を結合させることで産業連関分析を海外のサプライチェーンも考慮して行うことができる手法である。最終的に、各国のリン資源の実質消費量の算出、各国のリンのリサイクルポテンシャルの把握、リン資源の消費に関するシナリオ分析などを行うことができると考えている。

農作物消費に伴うリン資源の国際フロー解析

図1 各国のリンの直接消費量

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