研究内容

Eco Material Processing

溶銑予備処理脱リンスラグ中のリン濃縮メカニズム

修士2年 円谷雄平  学部4年 竹田泰之

鉄鉱石・石炭の品位低下と鉄鋼材の品質向上目的からスラグの排出量は年々増加している。特に製鋼スラグ中には鉄分を始めマンガン、リンなどの有価元素が含まれており、なかでもリンは鉄鋼材の冷間脆性の要因となるため徹底的にスラグ中に除去される。しかし、現在製鋼スラグの再利用用途は路盤材や土木工事用途が主であり、含有される有価元素に着目したリサイクルは殆ど行われていない。

一方、リンは農業肥料の必須成分であり、現在わが国では原料のリン鉱石を全量輸入している。リン鉱石は貧鉱化や短い可採年数、産出国の偏在など資源的な問題点を抱えており、供給の不安定化が懸念されている。横山ら1)は国内で排出される製鋼スラグ中のリン総量が、我が国が輸入するリン鉱石中に含まれるリン総量に匹敵することを明らかにしており、製鋼スラグ中に濃縮したリン成分を分離・回収することが出来れば製鋼スラグをリン代替資源として利用できる可能性が見込まれる。また、リン成分を取り除いた残渣の主成分は鉄分と石灰分であるため、再度鉄鋼製錬過程に投入できる可能性が見込まれる。

以上のように製鋼スラグ、特にリンの濃化した溶銑予備処理脱リン工程から排出されたスラグのリン濃縮相を分離回収することはスラグ排出量低減・リン二次資源確保・鉄源再利用の各点から有意義である。

先行研究2)3)では、製鋼スラグの凝固組織は主にリンの濃化したダイカルシウムシリケート‐リン酸カルシウム固溶体(Ca2SiO4-Ca3P2O8)とリンを殆ど含まずマンガンを含むFeO系スラグ凝固相(FeO-MnO-CaO-SiO2)に大別されることが明らかにされた。本研究ではCaF2がCa3P2O2と安定化合物を形成することから、リン濃縮相の存在形態への影響に注目し、脱リンスラグにCaF2を添加した場合のリン濃縮相の挙動を調査している。

溶銑予備処理脱リンスラグ中のリン濃縮メカニズム

Fig. 500倍視野におけるCaF2無添加脱燐スラグ(左)とCaF2添加脱リンスラグ(右)のSEM画像

1) 横山一代、久保裕也、森一宏、岡田秀彦、竹内秀次、長坂徹也:鉄と鋼, 92(2006), p.683.
2) 久保裕也:東北大学大学院博士論文,(2005)
3) 鄭 鏞洙:東北大学大学院博士論文,(2010)

Page Top