大学院・環境科学研究科 研究室
先端環境創成学専攻

資源循環プロセス学講座 循環材料プロセス学分野(コマロフ研究室)

研究トピックス

超音波を利用した材料プロセッシング

超音波は気体や液体、固体のような弾性体中での超音波伝播能力や必要とされる場所へ超音波のエネルギーを伝播させる能力に影響される。本研究での目的は、超音波に関連した現象を調査し、溶融金属、排水、排気ガスに対するより効率的で持続可能な処理プロセスを開発することである。特に、当研究室では実験と数値シミュレーションを利用してキャビテーションや音響流という現象を調査している(Fig. 1)。液相中へ超音波を照射した時にこれらの現象が発生する。キャビテーション気泡は超音波によって圧壊するが、そのときに莫大なエネルギーを放出するため、溶融金属中での凝固中の結晶や固体粒子の破壊や分散、排水処理を補助する高反応性である化学ラジカルの生成に利用される。例えば、凝固直前のAl-Si合金溶湯への高強度の超音波照射は初晶シリコン粒子を微細化する(Fig.2)。これは、耐摩耗性、低熱膨張性を有する新規高Si合金の開発に役立つ。別の例としては、”フローズンエマルジョン”という新しい複合材料を作製することにも超音波は利用される。

環境、材料プロセッシングへの電磁場の応用

本研究室では、マイクロ波(GHz)を用いた材料プロセッシングを行なっている。マイクロ波は電磁波であり、GHzで振動する電場と磁場を有している。我々は、材料に対する電場と磁場による照射効果を分離して調べている。特にマイクロ波磁場と外部静磁場との関係は、磁気共鳴をはじめとし、新規な材料プロセッシング手法の開発において興味深い。さらにマイクロ波には、熱平衡論では説明が難しい「非熱的効果」が存在すると言われている。図3には(a) ZrO2,B2O3,Cのマイクロ波励起反応によるZrB2 を1300℃で時間を変えて得られた生成物のXRDプロファイルおよび(b)反応により生成したZrB2のSEM写真を示す。反応時間とともにZrB2の量が増えるとともに、熱力学で予想される温度より低い温度でZrB2が生成することがわかる。これは材料製造プロセスにおいて、省エネルギー化に寄与すると考えられ、期待されている。またガラスリサイクルにおける成分の均一化等を目的として、高周波(kHz)印加に依る非金属融体の誘導加熱撹拌に関する基礎研究(低融点の溶融ガラスや溶融塩を対象として実験及びシミュレーション)を行っている。

超音波を利用した材料プロセッシング

アルミニウムのリサイクル率を向上させることを目的として、リサイクルによって再生された二次地金を利用する割合を高めるための研究を行っているが、二次地金には多くの不純物を含む。そこで、アルミニウム溶湯から不純物を除去する機械撹拌を利用した画期的な手法を開発している。これらを達成するために、水を用いた流動、物質輸送実験、アルミニウム溶湯処理・鋳造実験を行っている。さらに、スーパーコンピュータを利用した大規模アルミニウム溶湯撹拌シミュレーションを行っている。Fig. 4のように水モデル実験や数値シミュレーションを利用することで機械撹拌操作中での気液界面変形挙動を解明し、酸化物巻き込み低減のための指針を示している。

Fig. 1:A typical pattern of cavitation zone and acoustic streaming

Fig. 1:
A typical pattern of cavitation zone and acoustic streaming

Fig. 2:Microstructure of Al-17%Si alloy (a) conventional alloy, (b) ultrasonic-treated alloy

Fig. 2:
Microstructure of Al-17%Si alloy (a) conventional alloy, (b) ultrasonic-treated alloy

Fig. 3:XRD patterns of microwave-excited reaction products

Fig. 3:
XRD patterns of microwave-excited reaction products

Fig. 4:Snapshots of (a) experimental and (b) simulated free surface shapes during mechanical stirring.

Fig. 4:
Snapshots of (a) experimental and (b) simulated free surface shapes during mechanical stirring.